株式会社国際協力銀行2019年度
新卒採用情報

Project

CASE 03

オランダ王国・洋上風力発電事業に対する
プロジェクトファイナンス

Project Outline

 JBICは、三菱商事(株)が出資するオランダ王国Clusius C.V.(CLUSIUS)との間で、同国の洋上風力発電事業を対象として、融資金額約244百万ユーロ(JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンス(PF、注1)による貸付契約(注2)を締結。本件は、三菱商事が、同国公営の総合エネルギー事業会社Eneco Holding N.V.(Eneco)と共同で設立したCLUSIUSが、Luchterduinen(Q10)洋上風力発電所を運営し、20年にわたりEneco Energy Trade B.V.(Enecoの100%子会社)に売電する事業に必要な長期資金を融資するものです。

Profile

宮口 知之
インフラ・環境ファイナンス部門
電力・新エネルギー第1部
調査役(当時)
倉本 惇弘
インフラ・環境ファイナンス部門
電力・新エネルギー第1部
副調査役(当時)
01
再生可能エネルギー分野における
日本企業の海外事業展開を支援
[宮口]

 本プロジェクトの特徴は、第1に再生可能エネルギー分野における日本企業の海外事業展開支援という点です。EUは再生可能エネルギーの活用を政策目標に掲げており、加盟各国では独自の政策による後押しの下で、数多くの再生可能エネルギー事業が進められています。洋上風力発電を含めた風力発電事業も活発に行われているため、諸外国の企業にとっては事業権獲得競争が激しく、日本企業が参画することは決して容易ではありません。そうした中で、洋上風力発電事業という再生可能エネルギーの中でも新しい分野の一つに、日本企業が参画した案件をJBICが支援することには大きな意義があると言えます。
 三菱商事は欧州での発電事業投資において、太陽光などの再生可能エネルギー分野に力を入れていますが、洋上風力発電事業への投資は本件が初めてです。オランダ王国公営の総合エネルギー事業会社であるEneco Holding N. V.と一緒にビジネスを進めることは、今後の三菱商事の再生可能エネルギー事業展開にとって大きな意味を持つことになります。

[倉本]

 2つ目の特徴は、通常案件とは異なり、発電所の建設が完工した後にPFベースで融資供与する案件となったことです。完工前の通常のPF案件では、レンダー(金融機関)側も応分の建設リスクを負担することになりますが、今回はスポンサー側の意向で完工後のPF供与の支援要請があったため、レンダーとしてのリスクはその分軽減されています。
 そうした中で難しかったのがマーケットリスクのカバーです。再生エネルギー事業制度は欧州各国で異なっているため、今回のPFの組成にあたっては、まず、オランダの制度を調べることから始めました。本件に適用されるオランダ政府による再生エネルギー助成制度は、一部マーケットリスクにさらされるので、プロジェクト事業者を幅広く巻き込んだセキュリティパッケージを構築していく過程で、そのマーケットリスクにいかに対処していくかに時間を割きました。
 また、JBICは協調融資銀行が選定される前から融資検討を開始しており、現地に何度も足を運び、プロジェクト会社やオランダ政府との交渉を行いました。融資検討プロセスの中で一番の山場はドキュメンテーション(契約書作成作業)で、10社近いステークホルダー間の利害調整をいかに上手く進めるかがポイントでしたが、最大の融資割合を占め、政府系金融機関であるJBICのスタンスが重要視されるため、三菱商事や日本国内の金融機関の今後の事業展開にも配慮をしながら、緊張感を持って交渉にあたりました。

02
大型化するプロジェクト。
増加する公的金融機関の支援機会
[宮口]

 近年、洋上風力発電分野ではタービンの技術革新が進み、1基あたりの発電量が大きくなっています。本件では1基3MW(メガワット)の風車が利用され、合計43本稼働していますので総発電量は129MWとなります。これに対して最近では、1基8MWの風車が商用化され、総発電量で500MWを超える洋上風力発電プロジェクトも見られるなど大型化が進んでいます。
 また、陸上風力発電に比べて風況が良く、土地や道路の制約がなく大型化が比較的容易な洋上風力発電の将来性は極めて有望です。欧州だけで2030年には66 GW( ギガワット:1GW=1,000MW)の市場規模に達するという見通しもある他、1件1,000MWを超えるプロジェクトも計画されています。
 このように、プロジェクト規模の大型化に伴いコストも増加していく傾向にあることに加え、日本企業も引き続き洋上風力発電事業への参画には前向きのようですので、JBICのような公的金融機関が支援を行う場面は増えると考えています。

(注1)本融資は民間金融機関との協調融資によるもので、融資総額は約443百万ユーロです。
(注2)プロジェクトファイナンス:プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトの生み出すキャッシュフローに限定し、プロジェクトの現地資産のみを担保として徴求するスキーム。

ProjectJBICのプロジェクト

ProjectCASE05

プロジェクトはどのように組成されるか
~融資検討から融資契約調印まで~