株式会社国際協力銀行RECRUITING SITE

03
WORK & PERSON
PROJECT #03

JBICが携わるプロジェクト

急成長する欧州洋上風力発電市場で
日本企業の事業参画を支援する
英国Moray East洋上風力発電事業に対するプロジェクトファイナンス

プロローグ

 英国政府は2008年に気候変動法を制定し、温室効果ガス排出量を2050年までに1990年対比で80%削減する目標を掲げている。また、2013年に制定したエネルギー法の下で再生可能エネルギー助成制度(CfD、注1)を導入することで、閉鎖する既存発電所の代替として風力・太陽光等の低炭素エネルギー電源の拡大に努めている。
 こうした中、JBICは2018年11月、三菱商事(株)をはじめとする日本企業コンソーシアムと、西・仏の大手ユーティリティ2社が参画する英国最大級の洋上風力発電事業へのプロジェクトファイナンス(PF、注2)方式による融資を実施した。本融資は、欧州洋上風力発電市場における日本企業の国際競争力の向上・維持や英国政府が掲げる温室効果ガス排出量削減に貢献するものだ。

Project Member

平本 英紀
電力・新エネルギー第1部
調査役
佐々木 浩太
電力・新エネルギー第1部
副調査役

MISSION

激化する事業権獲得競争を
長期融資で支援

佐々木

本プロジェクトは、三菱商事(株)、関西電力(株)及び三菱UFJリース(株)などが出資する英国法人Moray Offshore Windfarm (East) Limited(MOWEL)が、英国スコットランド沖合において総発電容量950MWのMoray East洋上風力発電所を建設・所有・運営し、CfD制度適用の下、15年にわたって電力小売事業者に売電するものです。本融資はJBICが2018年7月に創設した「質高インフラ環境成長ファシリティ(注3)」の欧州における第一号案件であり、MOWELに対する融資金額は約743百万ポンド(JBIC分、注4)限度です。

平本

 欧州の洋上風力市場は2010年代以降、急速な成長を遂げており、そのシェアは世界市場の80%以上。国別導入状況では英国がトップ(43%)で、ドイツ(34%)、デンマーク(8%)などが続いています。今後も固定買取価格水準の下落を背景に欧州各国が開発計画を積み増し、さらに台湾・米国など新市場の開拓が見込まれることから、世界の洋上風力市場は年平均16%程度の伸び率で成長することが予想されています。
 こうした中、各国企業間での事業権獲得競争も激化していますが、日本企業は大規模洋上風力の商業運転の実績がほとんどなく、事業参画は容易ではありません。そこで、洋上風力の最先端市場である欧州に進出してノウハウを取得することで、欧州各国のプロジェクトに参画する、あるいは新市場として期待される米国や台湾、日本などでの展開に備えたいと考えているのです。その意味で、本プロジェクトにおける日本企業の事業権獲得をJBICが支援することには大きな期待が寄せられていました。

ACTIVITY

積極的なリスクテイクと
粘り強い融資交渉の末に

佐々木

 今回のPFのポイントの一つが、通常のPFにはない技術リスクを取ったことです。総発電容量が950MWと英国最大級であり、そこで使用する風力タービンには、三菱重工がデンマークのVestasと合弁で設立したMHI Vestasの最新式世界最大出力タービン(9.5MW)100基が使用されることになっていました。通常のPFでは、既に商業運転の実績のある設備を使うのですが、本件の風力タービンは最新式であるがゆえに、まだ運転実績がなかったのです。そこで我々は、技術面のリスクを早期に見極めるためにMHI Vestasの現地工場に視察に赴き、慎重な実査を行った末にこの技術リスクは取れると判断したのです。

平本

 もう一つのポイントがスポンサーとの融資交渉です。近年、欧州では洋上風力発電事業の大型化が進みつつあり、これに伴うコスト増加で事業者は長期・巨額の資金調達の必要性に迫られています。本プロジェクトも世界有数の規模で、資金ニーズも長期・巨額となることから、JBICとして何としても事業者の期待に応えたいという思いで交渉に臨んだのですが、本事業の欧州サイドのメインスポンサーであるスペインのEDPRとJBICはこれまで協業したことがなかったため、両者間でリスクテイクに対する考え方の相違があり、また、欧州の洋上風力市場ではスポンサーの立場が極めて強いことから融資交渉が難航したのです。

佐々木

 EDPRからは特に本行ポジションに対する合理的な説明が求められたため、既往案件での取扱い如何にかかわらず、イシューによってはゼロベースで検討することも意識し、先方の要請には真摯に対応するようにしました。時には、JBICのプレゼンスが比較的高いアジア地域のコンベンショナルなIPP(独立系発電事業者)案件での融資条件とは異なる新しい仕組みや一歩踏み込んだリスクテイクにも取り組みました。そうした姿勢でEDPRとの間で約1年間、粘り強く交渉を重ねた末に、ようやく良好な関係を構築するに至りました。今後、日本企業が洋上風力発電事業への参画・関与を一層進めるには海外大手ユーティリティとの連携が必須となる中、JBICが本件を通じてEDPRと信頼関係を築いたことは大きな意味があったと言えます。

TALK

 

平本

 最終的にはEDPRからは「JBICは非常にリーズナブルで、協働しやすい」という評価を頂きました。融資後の反響も大きく、現在、本件に関するプレスリリースを見た商社や海外のディベロッパーなどから、世界各国の洋上風力案件が数多く持ち込まれている状態です。

佐々木

 商社に続いて、電力・ユーティリティ企業も洋上風力発電のノウハウ取得に向けて市場参入しはじめており、本件がそうした流れを作る上で一つのメルクマールになったとも言えると思います。

(注1)英国政府が100%出資するLow Carbon Contracts Companyと発電事業者の間で締結するContracts for Difference契約に基づき、英国政府が決定した基準価格と電力市場指標価格との差額調整を実施することにより、発電事業者の収入を長期間にわたり保証する制度。
(注2)プロジェクトファイナンスとは、プロジェクトに対する融資の返済原資を、そのプロジェクトが生み出すキャッシュフローに限定する融資スキーム。
(注3)再生可能エネルギー分野を含め、地球環境保全目的に資するインフラ整備を幅広く支援することを目的とする制度。
(注4)本融資は民間金融機関との協調融資であり、協調融資総額は約1,517百万ポンド。