プロジェクトを知る #10

脱炭素化地方電化率向上教育普及など、ベナン持続可能発展貢献

ベナン共和国における小学校向けランタン電化事業を支援

OUTLINE

西アフリカに位置するベナンは、農村部の電化率や初等教育の普及などに関する社会課題を抱えています。こうした中、JBICは2023年6月、同国政府との間で小学校向けランタン電化事業を対象とする貸付契約を締結しました。未電化エリアの小学校において、太陽光発電により充電したランタンを生徒に貸し出すことで、各世帯の電化や通学習慣の定着化などに貢献する本件。協議が難航する中、現地出張などあらゆる手段を駆使して粘り強く働きかけ、チームで連携しながら契約調印まで辿り着いた道のりについて、担当した職員たちに聞きました。

PERSON

総合職
村井 教晃(2005年入行)
資源ファイナンス部門
エネルギーソリューション部 第3ユニット
ユニット長
総合職
平戸 瞳(2022年入行)
資源ファイナンス部門
エネルギーソリューション部 第3ユニット
係員
業務職
五十嵐 江利(2019年入行)
資源ファイナンス部門
エネルギーソリューション部 第3ユニット
副主任

PROJECT OUTLINE

JBICは2023年6月、ベナン共和国(以下、ベナン)政府との間で、2021年3月に設定したクレジットラインの下、総額1百万ユーロ(うちJBIC融資分500千ユーロ)を限度とする貸付契約を締結した。本融資は、株式会社三菱UFJ銀行及び株式会社常陽銀行との協調融資により実施するものであり、JBICは民間金融機関の融資部分に対して保証を提供する。本件は、地球環境保全業務(通称「GREEN」)※1の一環として、ベナンにおける小学校の屋根に太陽光パネルを設置し、太陽光発電により充電したランタンを生徒に貸し出すことで、未電化エリアにおける各世帯の電化をクリーン電源により実現する事業に必要な資金を融資するもの。通学習慣の定着化を通じた初等教育の普及に貢献するほか、再エネ電力の活用により温室効果ガスの排出削減に繋がることで、持続可能な発展を実現する一助となることが期待されている。また、ベナン国内では電力普及率の地域格差が著しい中で、農村部における電化率向上という社会的課題の解決にも貢献するものである。

社会課題解決に貢献する
意義の大きさを現地で実感

ベナン政府は2016年にパリ協定に署名し、2017年には気候変動対策計画を策定するなど、気候変動対策に対して強いコミットメントを示している。こうした取組みに寄与するため、JBICは2021年3月、融資総額30百万ユーロ(うちJBIC融資分18百万ユーロ)を限度とするクレジットライン設定のための一般協定を締結した。本協定は、ベナンにおける地球環境保全プロジェクトの実施に必要な資金を、同国政府を通じて融資するためのものである。一般協定の締結後、JBICは個別プロジェクト向け融資契約の締結に向けて、同国政府と対象プロジェクトに関する具体的な協議をスタートした。

融資対象の地球環境保全プロジェクトとして想定されていた案件の一つが、小学校向けランタン電化事業。ベナンの電化率は41%(都市部66%、農村部18%、2020年時点)に留まっており、特に農村部における電化率向上は政府行動計画の中で重要課題として指定されている。こうした中、本事業は小学校の屋根に太陽光パネルを設置し、太陽光発電により充電したランタンを生徒に貸し出すことで、未電化エリアにおける各世帯の電化をクリーン電源により実現するものである。

「各世帯で従来使用されているオイルランプなどを、太陽光由来のクリーン・エネルギーを活用したソーラーランタンへ。こうして温室効果ガス排出量を削減することで、ベナンにおける脱炭素化に係る取組みや持続可能な発展の実現に貢献できます。また、農村部における電化率向上といった社会課題解決への貢献や、同国政府との関係強化という意味でも、非常に意義深い案件でした」(ユニット長・総合職 村井)

「本件の意義を特に強く実感したイベントは、本事業のパイロット事業が実施された現地の小学校を訪問し、校長先生から事業の有用性について熱くご説明いただいた時でした。未電化エリアの各世帯にとって、ランタンは光源としても携帯電話などの充電のための電源としても重要なもの。小学校で充電されたランタンを自宅に持ち帰れるというインセンティブを各世帯に与えることで、親や保護者が子供たちを学校に通わせることにつながります。そのため、本事業は、通学習慣の定着化を通じた初等教育の普及実現という同国の社会課題解決にも貢献する案件でした」(係員・総合職 平戸)

機内での飛び込み面談が
難局を打開する好機の一つに

しかし、ベナン政府側との契約交渉は難航した。その主な原因の一つは、日本とベナンにおけるスケジュール感覚やビジネス作法などの違いにあった。

「メールをしてもなかなか返信をいただけず、質問をしても十分な情報が得られませんでした。現地まで赴いたのにキーパーソンと面会できないケースもありました。当初の計画どおりに物事が進まない状況を打開できた大きな要因の一つは、平戸さんが卓越した仏語を駆使して相手方とのリレーションをつなぎ留めてくれたことにあります」(ユニット長・総合職 村井)

「大学時代の交換留学やフランスの大学院で身につけた仏語を活かし、入行前から希望していたアフリカ案件に携われることは嬉しいものでした。電話会議やメール、在ベナン大使館への支援要請などありとあらゆるコミュニケーション媒体を用いて状況を掴み、事業実現に向けて次なるアプローチとして何が必要かを考えました」(係員・総合職 平戸)

複数回にわたりベナンに出張し、財務省や初等教育省など同国の関係省庁に働きかけ、現地で事業を進める日本企業との情報交換・協議を実施した。こうした場面で活躍したのが、業務職として出張事務を担当した五十嵐だ。

「本件では現地出張が突発的に決まるケースが多く、出発の前営業日に至急手配が必要となった時もありました。他関係部署やベナンを管轄するパリ駐在員事務所などと速やかに連携し、フライト・ホテル・ビザなどを一挙に並行して確保することが求められました。出張者がスムーズに、また安全に現地で仕事を進められるよう、柔軟かつ主体的に諸々の手続きを実施しました。不測の事態に備えるために、管理表を作成の上タスクを整理しメモを蓄積するなど常日頃より綿密な準備を行い、冷静な対処を心掛けました」(副主任・業務職 五十嵐)

契約交渉が難航したもう一つの要因に気付かされたのも出張時だ。ベナン財務大臣とのアポイントメントが東京からでは取れず、現地での調整を試みようと日本を出発したベナンへの航路。偶然にも当の大臣と同便に乗り合わせており、機内で急遽面談を実施した。

「機内での飛び込み面談というエキサイティングな出来事のおかげで、現地での面談も実現。融資対象のプロジェクト候補がベナン政府内でまだ承認されていないこと、小学校向けランタン電化事業に充当する金額はクレジットラインの一部であることなど、それまで不透明だったベナン政府の意向やプロジェクトのステータスが明確になりました。自分の足で現地に行き、案件の状況を掴みにいく感覚にやりがいを感じた瞬間でした」(係員・総合職 平戸)

アフリカの周辺国においても
GREEN事業を支援する突破口に

その後、ベナン政府の意向を踏まえて太陽光発電施設の新設事業への融資という新規案件も組成し、小学校向けランタン電化事業と並行して2案件の契約交渉を実施。JBIC内においても融資契約締結に係る手続きが進められた。

「入行したばかりで右も左も分からない中、稟議の書き方からスケジュールの組み方、契約書の読み方まで、村井さんや先輩方から多くのアドバイスをいただきました。ベナン政府の動きが見えづらく、関係部署や協調融資銀行との連携も必要となるため、スケジュール表を何度も更新しながら工程を管理したことは、今後の業務にも活かせる貴重な経験でした」(係員・総合職 平戸)

「平戸さんとは同じタイミングで現部署に配属となり、お互いに、初めて深く関与した案件でした。終始、それぞれの視点から2人で積極的にコミュニケーションを取りながら、対応に不備・不足がないかを相互確認し段取りを組みました。稟議決裁や案件情報のシステム登録など、融資契約の締結間際になると不安も募りましたが、先輩方から助言をいただきながらチームで一致団結して取り組めたおかげでミスなく事務を進めることができました」(副主任・業務職 五十嵐)

こうして本件は、2023年6月に融資契約を締結。ベナン財務大臣が来日して調印式が執り行われた。

「JBICの本店で調印式が実施された際、私もベナン側の関係者と対面することができました。調印の様子を写真撮影しながら自分が携わっている仕事の重要性を強く実感するとともに、今回のプロジェクトの一端を担うことができたことにやりがいと達成感を味わえました」(副主任・業務職 五十嵐)

「本件を振り返ると、最も苦労したのは状況把握でした。あらゆる手段を使い、時間をかけながら相手方から情報を引き出すこと。また、こちらの思いどおりに物事が進まなくても、腐らず・諦めず、融資契約締結に向けて協議を継続することが求められました。今回の経験を通じて、入行当初には備わっていなかった粘り強さが身についたように思います」(係員・総合職 平戸)

「日本から遠く離れた西アフリカにおいて、高い地球環境保全効果を有する案件に対して支援を行うエポックメイキングな案件でした。『周辺国で同様の事業を行う場合も、我々は支援できる』というメッセージにもなり、アフリカでのヨコへの広がりという点で、今後のJBIC業務のポテンシャルを示すことができました」(ユニット長・総合職 村井)

※1 地球環境保全業務(通称「GREEN」):高度な環境技術を活用した太陽光発電などの高い地球環境保全効果を有する案件に対して、民間資金の動員を図りつつ、融資・保証・出資及び投資を通じた支援を行う業務。

PROJECT FLOW

ハイレベル会談

2019年8月、TICAD7(第7回アフリカ開発会議)にてベナンのタロン大統領とJBICの林総裁間で会談を実施。以降、同国経済財務省大臣を含め、オンライン会議などを継続的に実施。

内談持ち込み

2020年、小学校向けランタン電化事業の事業者などからベナンでの事業展開に係る相談がJBICに寄せられ、同国政府に同年9月頃からGREENクレジットラインを提案。

一般協定締結

2021年3月、ベナン財務大臣の高い関心を受け、同国政府との間で融資総額30百万ユーロ(うちJBIC融資分18百万ユーロ)を限度とするクレジットライン設定のための一般協定を締結。

機中での面談

2022年7月、ベナンに向かう飛行機内で、偶然遭遇した同国財務大臣と面談。その後に現地で行われた面談で、国内の案件需要に関する意見交換や対象プロジェクトへの融資に向けた具体的な協議を実施。

2件同時の契約交渉

2022年8月以降、ベナンエネルギー省が実施する太陽光発電事業に関する内談が新たに日本企業から持ち込まれ、小学校向けランタン電化事業と並行して融資契約締結に向けた協議を継続的に実施。

融資契約締結

2023年6月、太陽光発電事業及び小学校向けランタン電化事業の2件に係る個別融資契約を締結。