JBICでは業務に関連する経済学、経営学、公共政策、法律などの知識の習得を目的とし、海外・国内の大学院への留学を経験することができます。「経済学を軸にキャリアを歩みたい」と考える禰寝創太は、経済学修士を取得するため英国・ロンドンにあるUniversity College Londonに留学。経済学の基礎理論を体系的に理解できただけでなく、政治・経済の動向を深く考えるきっかけにもなったと言います。留学先で得た学びや、今後への活かし方、家族で経験した海外生活について聞きました。
大学時代に経済学部で学んでいた私は、入行前から経済学の勉強を面白いと感じていました。JBICに入行すると、その興味はさらに膨らみました。入行後最初に配属された部署では、主に外国政府に出融資を行う案件を担当し、そうした外国政府などの信用力を審査するソブリン審査に触れる中で、マクロ経済学を中心とした経済学全般の知識を研鑽する重要性に気付かされたからです。そこで私は経済学修士を取得するため、入行5年目で英国・ロンドンにあるUniversity College London(以下、UCL)に留学しました。
一般的に経済学の修士課程は、コアコースと呼ばれる経済学の基礎理論(マクロ経済学、ミクロ経済学、及び計量経済学)をしっかり学ぶカリキュラムとなっています。UCLに留学した私も例に漏れず、これらの基礎理論を1年間かけて頭にたたき込むことになりました。また、最後の3か月間はそれまでに身につけた基礎理論を踏まえ、ソフトウェアを活用して修士論文も執筆。理論と実践をバランスよく学ぶことができたと思います。
まだ修士課程のレベルではありますが、経済学に関する確固たる知識を得ることができました。特に大学時代にあまり深く学修しなかったマクロ経済学については、今回の留学で基礎知識から体系的に学べたため、今後JBICでもソブリン審査などの業務に活かすことができるはずです。
情報収集や語学力向上への意欲も高まりました。というのも、政策金融機関であるJBICに勤めていることを他国の学生に話すと、日本の政治・経済に関する様々な話題をよく振られたからです。目の前の案件に関することのみならず、より広い視点で政治・経済の動向について深く考えるクセを付ける良いきっかけになったと思います。また、ディスカッションの場面では、私の英語力ではネイティブの学生に歯が立たないことも多かったです。そうした悔しさから、今後も英語の研鑽を続けなければならないという強烈なモチベーションを得ることができました。
留学前から「経済学を軸にキャリアを歩みたい」と考えてきたため、今回の留学は私にとってあくまで通過点です。今後、JBICの中でも経済学に精通した人材として付加価値を高められるように努力していきたいです。留学後はASEAN+3 Macroeconomic Research Officeというシンガポールにある国際機関に出向していますが、ここでもASEAN+3各国のマクロ経済分析を行い、レポートを執筆するなど、マクロ経済学や計量経済学の分析手法を用いた業務経験を積むことができています。帰任後はこうした経験も含めて、私が身につけてきた経済学の知識をJBICに還元したいと思います。
博士号(以下、PhD)まで取得して初めて一人前と見なされる経済学の世界。現在の出向先でも、同僚のエコノミストのほとんどがPhDを保有しています。JBICでは近年、高度な知見・専門性を発揮して活躍するプロフェッショナル人材のための新たな人事制度も導入されているので、こうした制度を踏まえ、より高度な知見・専門性を獲得するため私自身も近い将来にPhDを取得したいと思います。その上でエコノミストとしての価値を高めていき、経済学のプロフェッショナル人材としてJBIC、そして日本および国際経済社会の健全な発展に貢献していきたいと考えています。
2020年9月からの留学期間中、ロンドンはコロナ禍の影響で長期間ロックダウンが続いており、ほぼ全ての講義がオンラインで行われました。留学中に教室に通ったのは、わずか3回。せっかくの留学の機会にもかかわらずキャンパスに通えなかったのは残念でしたが、プラスになった面もありました。各授業の課題については、グループで議論した上で提出する方式になったため、各国の学生と議論を交わしながら課題を仕上げることができとても良い経験になりました。また、オンライン講義は時間の制約なく復習できたため、授業の内容を効率よく理解することができました。
外出制限が緩和された2021年春以降は、ロンドンで知り合った友人たちとテニスをしたり、食事に行ったりと、本当に楽しく充実した日々を送ることができました。
また、妻にとっても、海外での長期滞在は人生で初めての経験でした。現地で英語を学んだ上でボランティアとして働くなど、積極的に海外生活を満喫していました。今回の留学は、家族で今後のキャリアや生活を考える、とても良い機会にもなったと思います。