アジアや欧州の政治経済・ビジネスの交錯点であるイスタンブールで、海外駐在員として活躍している田中真奈美。答えや前例のない初期的な案件相談が顧客から持ちかけられる中で、顧客とともに頭を悩ませながら、主体的に解決策を模索していくことが面白いといいます。現地企業や専門家と関わりながら日本では得がたい知見を獲得する日々や、地域の専門性を活かした今後のキャリアイメージ、イスタンブール生活などを聞きました。
「将来は様々な地域や分野に関わる国際的な仕事がしたい」と考えて、私は総合大学の外国語学部に進学しました。在学中、ロシアに1年間留学した際、現地ビジネスに携わる日本企業の姿や、その技術が現地で重宝されているのを目の当たりにしました。この経験をきっかけに「日本のビジネスで世界をより良くする手伝いがしたい」と考えるようになり、JBICに入行しました。
入行後は、ロシア及びNIS諸国のプロジェクトやRM※を担当。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い当該地域を取り巻くビジネス状況が一変する中、ウクライナ・周辺国支援関連業務に携わる機会を得ました。また、海外駐在員事務所トレーニー派遣でパリ駐在員事務所に派遣された際、EU、特に中東欧諸国に関するプロジェクトやリサーチ業務も経験しました。こうした業務経験を経て、今まで携わってきた各地域の政治経済・ビジネスの交錯点・要衝であるイスタンブールへの赴任を希望するようになりました。
イスタンブール駐在員事務所は、トルコをはじめアゼルバイジャン、ジョージア、トルクメニスタン、アルバニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロを管轄しています。これらの管轄国について、現地の日本企業や現地企業からファイナンスのご相談をいただく案件発掘、政府機関との関係構築、日本からの出張者のサポート、政治経済に関するリサーチ・情報発信などを担っています。4名(回答時点)で構成される小規模な事務所であるため、各々が責任を持って担当業務を遂行。フロント業務から事務所運営まで幅広い業務に携わる中で、自分自身の可能性を広げていくことができそうです。
日本の出融資担当部門と比べて顧客から初期的なご相談をいただく場合が多く、よく顧客と一緒に頭を悩ませています。トルコの制度や規制は変わりやすく、事務所運営における諸手続きがスムーズに進まないことも日常茶飯事。答えや前例がない中で、主体的に関係者を巻き込んで様々な問題に対する解決策を模索していく日々は刺激的です。
事務所内外で顧客と面談を行うばかりでなく、日・トルコ両国の企業が参加する経済会議への参加、JBICが融資した港の実査への同行、外国審査部の調査ミッションに同行してアゼルバイジャンやトルコの政府機関・専門家に中央アジアの政治経済情勢に関するヒアリングを行うなど業務は多岐にわたります。こうした日々のフロント業務の中でトルコ企業の方々と実際にお会いして生の声を聞くことで、マクロ経済の変化に敏感に対応しつつ国際ビジネスを展開している現地企業の姿勢や、彼らが日本企業に期待している役割について肌感覚で理解することができます。また、複数の政府機関や専門家からのヒアリングを通して、国際政治経済が抱える様々な問題について核心・本質の理解に近づけるなど、デスクトップリサーチやマスメディアからは得られない知見を獲得できています。
今後は、海外駐在により得られる地域の専門性を活かしつつ、日本のビジネス支援を行える人材へと成長していきたいです。これまでの業務で関わってきた旧ソ連や欧州、それを取り巻く各地域は、広域でありながらも互いに密接に影響し合っています。こうした国々の地域研究への関心が高まってきているため、海外大学院への留学を視野に入れながら、ファイナンスだけでなく国際情勢の調査や国のリスク審査といった業務にも携わってみたいと考えています。
JBICには、海外赴任から1年半にわたり現地語の学習をサポートしてもらえる「赴任語学研修制度」があります。私もこの制度を活用し、マンツーマンのトルコ語レッスンを受講しながらイスタンブール生活を送っています。
トルコ料理は世界三大料理の一つ。伝統的なトルコ料理からスイーツ、ストリートフード、若者に流行りのカフェまで、グルメ巡りをするのが休日の楽しみです。ハマムと呼ばれるトルコ式スパであかすりやマッサージを受けたり、カメラを持って散歩しながら猫の写真を撮ったり、海を眺めたりするのもお気に入りのリフレッシュ時間。イスタンブールは欧州などへのアクセスも良いので、週末を利用してドイツのクリスマスマーケットに行ったことも忘れられない思い出です。
※ RM:ビジネスパートナー間に良好で長期的な関係を構築するためのビジネス戦略手法。