人を知る #4
日本の鉱物資源の長期安定確保に向けた金融面の支援を担う鉱物資源部で、2018年より部長を務める佐久間佳寿子は、メンバーがモチベーションを高く維持しながら仕事に臨める環境づくりに努めています。これまで10回程の部署異動を経て培った経験やスキルの「点」が、振り返ってみると全て「線」となってつながり今に活きている実感があるといい、「持ち場、持ち場で、果たすべき役割に打ち込めるかが重要」と語ります。これまでキャリアを積む中で、仕事に対する意識や視点にはどのような変化や広がりがあったのか。若手職員に期待することも含めて、聞きました。
鉱物資源部は、日本が必要とする資源のうち、鉱物資源の長期安定確保に向けた金融面の支援を担う部署です。私はこの鉱物資源部の部長として、部のメンバーがモチベーション高く日々の仕事に臨み結果を出せるよう、マネジメントに努めています。リーダーシップにも人それぞれスタイルがありますが、平常時や普段は、私自身は周りをぐいぐい引っ張るよりも、目を配ってサポートすることを役割と捉え、皆が気持ち良く働ける環境づくりに努めながら、困りごとも一緒に考え解決していくスタンスで進めています。
JBICでキャリアを積むことで得られるものの一つに、グローバルに議論されているイシューについて、より近いところで当事者として携わっている実感を持てることが挙げられます。もちろん若手のうちからも、担当の案件や業務を通じて、社会課題の解決に貢献する醍醐味を見出せるでしょう。そうした経験を積み重ねる中でやがて、個々の案件の範囲を超えて、世界で起きている事象に対するJBICの役割の多面的な関連性が見え始め、過去・未来を含めた世の中の大きな流れの中で物事を見る視点が培われていきます。例えるなら、山の登り初めは前方の道しか見えないのが、高度を増すほどに次第に視界が大きくひらける喜びに似ているかもしれません。
入行から現在までに10回程の異動を経験し、そこには特に脈略があるように思えなかったものの、今になって振り返ると、一つひとつの点と点が、線になって確かにつながっていることを感じます。改めて大切だと思うのは、持ち場、持ち場で果たすべき役割に全力を尽くすことで、その積み重ねは未来に活きる財産になります。例えばこれまで、融資担当部門と、それに対する牽制機能を果たす審査部の両サイドを経験したことは、現在の部署での資源案件組成や、アフリカでのツー・ステップ・ローンといった新しい取組みを推進する上でも役立っています。また、入行4年目に審査部で担当したチリの銅鉱山のプロジェクトファイナンスが、22年経った今でも鉱物資源部の案件として継続していて、長い歳月を経て、違う部署で同じ案件に再会する感慨深さも味わっています。
2008年には産休・育休を取得し、以降は育児と仕事の両立生活を続けています。管理職として、ある程度は自分で時間や業務量を調整できる半面、他の人に代わってもらうことが難しい仕事もあり、模索しながらここまできたというのが正直なところです。今後も、置かれた場所で精いっぱい咲くことに努めるとともに、JBICがその役割を果たすことを通じて、日本の持てる力を国内外で花開かせ、世界の人々のより良い暮らしに貢献できればと思っています。
政策金融機関であるJBICの仕事は、ある意味で日本の代表を務めることであり、日本や相手国に関する歴史観や知見、国益を考える冷静な思考、国内事情や海外情勢の把握、そして幅広い知識やコミュニケーション能力も必要です。仕事内容は常に複雑かつ難解であり、やりごたえ満載で、持てる能力を存分に発揮してもなお、さらなるチャレンジが待っています。それを追い続ける中で、まだ見ぬ自分の力が引き出され、その繰り返しで進化していける環境は、活躍のフィールドとして不足はないでしょう。
持ち場でベストを尽くす大切さに触れましたが、一方で、自分はどのような方向に進みたいのか、中長期的なビジョンを描くことも重要だと思います。自身のキャリアだけでなく、JBICの仕事についても長期的スパンで捉え、20年、30年、さらには次の世代が暮らす50年、100年先も見据えながら、日本や世界がどうあるべきかを考える視点をぜひ持ってください。JBICの機能や役割は、この先も時代の変化とともに移り変わるでしょう。時代やニーズに即して、あるいは先んじて、JBICが絶えず進化しているように、世の中の動きに感度高く対峙し、柔軟な発想力でしなやかに対応する力を磨いてほしいと願っています。