OECD事務局への出向などを経験後、入行14年目からシンガポール駐在員事務所で活躍している林郁。シンガポールやマレーシアなど多数の管轄国において、現地政府・企業との関係構築や、政治経済動向の情報収集などを行っています。海外駐在で得た東南アジア各国に対する知見は、国際経済を理解する上で役立つはずだと語り、今後のキャリアを想像して目を輝かせています。上席駐在員として感じる海外駐在の魅力や、家族同伴での海外生活について聞きました。
学生時代に長期の海外経験がなかったため、入行時から海外勤務には興味がありました。入行5年目でOECD(経済協力開発機構)事務局に出向し、国際機関という多文化が混在する中で業務をまとめる能力を習得。「次は海外駐在員事務所でも勤務したい」と考えていた頃、他社に勤める夫がシンガポール駐在となったことが契機となって私も同国に赴任しました。
シンガポール駐在員事務所の管轄国は、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、バングラデシュ、豪州、パプアニューギニア、太平洋島嶼国、台湾。こうした国々の現地政府・企業との関係構築や、政治経済動向などの情報収集、ASEAN(東南アジア諸国連合)などの動向確認を行っています。また、事務所内のコンプライアンス管理、ローカルスタッフ管理、ビザ申請などの庶務も私の担当です。
駐在2年目のとき、在シンガポールのAPEC(アジア太平洋経済協力)事務局との関係構築を図る中で、ベトナムで開催される非公式会合でJBICのインフラ融資に関してプレゼンをしたことがあります。事業者と近い目線で案件に携わる一方で、そこで得た知識・経験を各国の政策運営の場で提案できる。そんなJBICならではの経験ができ、非常にやりがいを感じました。
シンガポール駐在員事務所は、アジア大洋州地域内にある7事務所を統括する地域拠点事務所としての役割も担っています。同じように、各国企業が地域統括拠点を置いている国であることから、企業との対話の際にはシンガポール以外の話となることが多く、セクターも国も多岐にわたるため日々の仕事も容易ではありません。そこで、自分の経験・知識を総動員する他、域内事務所の同僚と情報交換をしたり、有識者の話を聞いたりと、地道に知識を蓄えることで乗り越えています。
その分、東南アジア各国に対する理解が深まったことに加えて、アジアと他地域の関係について考えるようになり、国際経済を理解する上で視野も広がりました。駐在経験を通じて得たアジア太平洋地域の政治経済動向に関する視座やネットワークは、日本に帰国してからも、あらゆる部署の個別案件形成に役立てられるはずです。将来的には、東京本店で個別案件に携わって金融経験を高めたあと、再び他地域の海外駐在を経験することで、さらに視野を広げ、深めていきたいと考えています。
以前、冗談半分で話していた「子連れで海外駐在」という目標が、今回のシンガポール駐在で実現しました。駐在当初は子供が英語を話せないのでシッターに任せきれず困りましたが、今では住み込みのお手伝いさんに任せて出張や夜の会食にも行けるようになりました。JBICでは最近、学費補助やベビーシッター補助の枠組みが広がり、家族同伴の海外駐在に対するサポートが充実してきたように感じています。
平日はなるべく20時には帰宅して、子供の宿題を手伝います。休日は、子供を習い事に連れていったり、友人家族とバーベキューをしたり、セントーサ島やマリーナベイサンズなどシンガポール散策に出掛けたり。長期休暇が取れたときは、家族で近隣国への旅行も楽しんでいます。