プロジェクトを知る #3

世界各国の政治経済を分析し、JBICの意思決定に活かす

ソブリン審査:出融資における外国政府などの信用力を審査

OUTLINE

JBICが携わる海外プロジェクトには外国政府などの信用力に左右される案件が多く、出融資を行う上でその審査を行う必要があります。この「ソブリン審査」を主に担当する外国審査部では、世界各国の審査を毎年実施して格付けを付与。JBICが様々な意思決定をするための判断材料として、出融資担当部門などに情報を提供しています。様々な専門性を備えた職員が集まり、JBICに不可欠な役割を担っている外国審査部の使命や業務内容について、同部署で活躍中の若手職員に聞きました。

※2019年度時点の内容になります。

PERSON

総合職
佐藤 謙成(2018年入行)
審査・リスク管理部門
外国審査部 第1ユニット

外国政府の信用力を審査する
ソブリン審査が主な業務

JBICが支援している海外の大規模プロジェクトには、外国の政府や中央銀行、外国地方公共団体といった事実上の外国国家(ソブリン)が関わる場合が多い。そこで、出融資においてどのようなリスクがあるか、外国政府などの信用力を審査する「ソブリン審査」を行う必要があり、それを主に担っているのが外国審査部である。外国審査部では毎年、約90か国について定期審査を実施し、レポートを作成し格付けを付与している。また、現地政府がプロジェクトに関わるためにその信用力を確かめたい場合などは、臨時で審査を行うこともある。

「私は主にアジア諸国の政府の信用力審査を担当しています。審査には、IMF(国際通貨基金)が毎年まとめている加盟国の経済・財政状況レポートをはじめ、種々の資料・データベースを活用。対象国の経済データを反映した分析モデルをベンチマークとしますが、モデルだけでは判断しきれない要素については、担当者の手で調整を加えていくため責任重大です」(佐藤)

出融資担当部門が案件を進める際、現地国にどのようなリスクがあるかを見極め、その対策を検討した上で出融資契約を締結する。契約書にどのような内容を盛り込むべきかなど、出融資担当部門が様々な判断をする上で役立つのが、外国審査部が収集・提供する現地国の情報である。

「われわれが提示した各国の政治経済状況が、出融資部門の判断に影響を及ぼすこともあります。そのため、定期審査で得た情報を提供することはもちろん、現地国に経済不安などが生じた場合は、その政策当事者や国際機関とのコネクションを利用し、今後の政策対応などについて迅速に情報を収集して他部署に共有しています」(佐藤)

現地に出張して話を聞き
国の状況や政府の思いを感じ取る

ソブリン審査を行う上で重視される指標は、国の財政状態や公的債務、国際収支などである。また、現地に出張し、政治経済の実情などを肌で感じることも重要である。特に開発途上国は毎年数パーセントもGDPが上昇し、数年も経てば状況は大きく異なるため、現地の政府機関・国際機関から財政状態や今後の方向性などをヒアリングすることが大切だ。

「初めて出張に行ったのはアジアの開発途上国。政府機関へのヒアリングでは、経済成長や課題解決のために国が動いている様子がリアルに感じられるなど、レポートからでは読み取れない国の状況を感じることができました。また、街中を見て歩くことでも様々な気付きがありました。例えば、為替レートの貼られたスーパーマーケットでは、自国の通貨よりも米ドルや中国元が使われている実態を垣間見ることができます。道路や電気などインフラが整っていない状況を目の当たりにしたことから、日本企業がインフラ事業に参画し、それをJBICが支援する重要性も実感することができました」(佐藤)

中には外部機関が格付けを示していない国や、インフラプロジェクト一つで信用力が変わってきてしまう国もある。国として統計データがまとまっていなかったり、現地の言葉でしか書かれていなかったりと、審査を行う上で参考となる情報が乏しいケースもある。

「情報が限られる中でも、自分なりにその国の構造・問題点を分析する力が身についてきました。出張などで得た情報からリスクシナリオを策定したり、他国を参考にインフラ建設費用を見込んだ上で債務持続性のシミュレーションを行ったり。こうした分析によって、定量的で説得力のある情報を他部署に共有することができます」(佐藤)

様々な専門家や上長に支えられ
知識や分析力を磨きあげられる環境

外国政府の信用力を審査するためには、様々な専門知識が欠かせない。経済学部出身でマクロ経済のゼミに所属していた佐藤であっても、入行当初はIMFのレポートを読むことすら困難だったという。ソブリン審査に必要な知識は、どのように養っているのだろうか。

「外国審査部には、金融・経済・統計など様々な専門性に長けた職員が多く、分からないことがあれば質問させてもらいます。また、昼休みに勉強会を開催してもらうこともあります。会議室に弁当を持ち寄って、新入職員向けの基礎的な内容から、金融政策、LNGの価格の動向まで、幅広い知識を学び合っています」(佐藤)

IMFへの出向を経験し博士号も有する部長や、出張経験が豊富で幅広い国々を知るユニット長からも、自身に欠けている視点を指摘してもらえるのが有り難いと佐藤は語る。

「ゆくゆくは出融資担当部門も経験すると思いますが、案件に応じて現地国の経済状況という視野を取り入れるなど、外国審査部で身につけた分析力や論理的な発信力を活用していきたい。そして、日本・世界の状況を踏まえて判断を下せるような、JBICをリードできる存在に成長していきたいです」(佐藤)

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