私たちの使命#4

紙の原料となる木材チップの、長期安定的な確保を目指して

植林拡張やバイオマス発電促進を通じ、地球環境保全にも寄与

OUTLINE

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世界有数の紙生産国である日本。その原料である木材チップは、森林保護などの観点から今後供給が世界的に制限されることが見込まれており、長期安定的な確保が日本にとって引き続き重要な課題です。JBICは2021年6月、日本企業がブラジル法人を通じて実施する植林及び木材チップの製造・販売事業に対し、融資金額約38百万米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を締結しました。本件を担当した木村恒輝は、コロナ禍で現地訪問がかなわない中で、植林ビジネスの全容理解に努めながら、交渉をまとめていきました。本件を通して再確認したJBICの、そして自身の使命とは。

PERSON

総合職
木村 恒輝(2017年入行)
資源ファイナンス部門
鉱物資源部 第1ユニット(当時)
副調査役

資源確保と環境保全の両方に
寄与するブラジルの植林拡張

日本は、中国及び米国に次ぐ世界第3位の紙生産国です(2019年時点)。紙を使った製品には、印刷用紙や新聞用紙、ティッシュやヘルスケア用品などに用いられる衛生用紙といった幅広い種類があり、高い経済成長率を有するアジア諸国を中心として引き続き堅調な需要が見込まれます。一方で、紙の原料である木材チップの約7割は輸入材であり、世界的に天然林保護の動きが強まる中、日本の製紙業界にとって海外での植林地由来の木材チップの確保は重要な課題となっています。日本の製紙業に必要不可欠な木材チップの長期安定的な確保を図る――この使命に沿って、本件は、JBICが日本製紙株式会社(以下、日本製紙)の子会社であるブラジル連邦共和国 (以下、ブラジル)法人Amapá Florestal e Celulose S.A.(以下、AMCEL)に対し、現地での植林及び木材チップ製造・販売事業の拡張に必要な資金を融資するものです。

JBICは2012年にもAMCELへの融資を行っており、今回はその拡張プロジェクトにあたります。前回の融資以降、AMCELは現地の土壌や気候に合わせて品種改良した優良木で植林を進め、毎年の収量を着実に伸ばしてきました。つまり本件は、この約10年間で日本製紙とAMCELとが努力を重ね軌道に乗せてきたプロジェクトを、さらに加速させるための支援であり、その意義の大きさに私自身も確かなやりがいを覚えました。また、植林事業は苗を植えてから伐採するまでに6〜7年を要する長期的な事業であり、民間金融機関よりも長期の融資を行えるJBICの強みが活きた案件とも言えます。

木材チップは近年、製紙用途だけでなく、再生可能エネルギーであるバイオマス発電の燃料としても世界的に需要が高まっています。本件で生産された木材チップの一部は、日本製紙が北海道苫小牧市で実施する国内最大級のバイオマス専焼発電所向けの燃料として用いられます。その点で本件は日本とブラジルだけでなく、地球全体の環境保全にも貢献し得るものであり、その事実も、案件を進めていく上での私自身の原動力になりました。

産業構造や潮流も踏まえて
案件に取り組む重要性を学ぶ

私は本件の前年に、同じ日本製紙の豪州でのM&A案件を担当いたしました。その際に実感したのは、日本の製紙業界が今、大きな変革期を迎えているということです。ペーパーレス化やリモートワークの浸透により印刷用紙などの需要は縮小傾向にあり、製紙会社にとって事業ポートフォリオの多角化は重要な課題となっています。先に触れたバイオマス発電も、日本製紙による事業多角化の一環に位置付けられます。その一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大による衛生意識の高まりなどを背景に、ティッシュなどの衛生用紙においては今後も堅調な需要が見込まれているなど、パルプの原料としての木材チップの確保につながる植林事業は製紙業界の本業を支える観点から依然として重要です。

こうした変化の潮流のただ中にあって、企業は新たにどのようなことに打って出ようとしているのか。また、業界全体としてどのような方向に進もうとしているのか。そうした点を強く意識しながらJBICとして支援に携わる大切さを学びました。本件でも、初めて触れる植林ビジネスの全容を理解することに注力しました。コロナ禍により現地訪問の機会を持つことはできなかったため、AMCELの担当者に電話やメールを通じて細かな質問をさせて頂いたので先方担当者も驚かれていたかもしれません。それでも親身に、写真などを使い詳しく教えていただきました。今後担当していく案件でも、産業構造やビジネスの全体像に目を向け、個々の案件がその中でどう位置付けられるのかを捉えながら、案件組成に尽力してきたいと考えています。

産業構造や業界全体の動向を理解することで、企業に対して「JBICはこの方面でもご支援できます」と提案できる幅も広がるはずです。日々変化する日本や世界の潮流をしっかりと認識した上で、政策金融機関としてリスクテイク機能を発揮しながら、新領域や成長分野の取組みも含め、ファイナンスというツールで支援していく。JBICだから果たせる、この役割と使命を、今後も真摯に追求し続けたいと思います。

PROJECT OUTLINE

世界有数の紙生産国である日本は、その原料である木材チップの大部分を海外からの輸入に依存している。森林保護などの観点から、今後木材チップの供給は世界的に制限されることが見込まれ、木材チップの安定確保の重要性が一層高まっている。JBICは2021年6月、日本製紙の子会社であるブラジル法人AMCEL との間で、融資金額約38百万米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を締結した。本融資は、株式会社みずほ銀行との協調融資により実施するもので、協調融資総額は55百万米ドルである。AMCELは、ユーカリの植林面積を約6万haから約7万haに拡張し、木材チップの販売量を年間約50万BD(絶乾重量)トンから約70万BD(絶乾重量)トンまで増加させる計画。本プロジェクトにより製造される木材チップの一部は、製紙用途及びバイオマス燃料として日本に輸入される計画であり、木材チップの長期安定的な確保に寄与することが期待される。また、日本製紙は、AMCELの木材チップを北海道苫小牧市のバイオマス専焼発電所に供給する予定であり、地球環境の保全にも貢献するものである。

※ バイオマス:動植物などから生まれた生物資源の総称。