大学時代に開発経済学を専攻し、開発途上国が抱える諸課題をどのように解決するかを学ぶ中で、「世界の経済発展に寄与したい」という思いを抱くようになった鈴木康太。入行後は電力・新エネルギー第1部に配属され、実際に現地の人々に電気を届けている既往案件に携われてやりがいを感じたといいます。自身の課題意識にも直結していた仕事内容や、ユニット異動後に携わっている新規案件の契約交渉業務、これまでに身につけられた業務スキルなどについて聞きました。
東南アジアの発展途上地域を訪れた経験から、私は大学で開発経済学を学びました。貧困やインフラ、医療、教育といった開発途上国が抱える様々な課題をどのように解決すべきかを学ぶ中で、「世界の経済発展に寄与したい」と考えるようになりました。また、シンガポールに住んでいた高校時代、日本の住みやすさや製品・サービスの品質の良さを実感しており、JBICなら両者をつなぐ仕事ができると考えて入行を決めました。
初めに配属されたのは、海外の発電所建設プロジェクトなどへの融資を担っている電力・新エネルギー第1部。私は第4ユニットで、既に融資を実行している既往案件の管理を担当しました。長期にわたってプロジェクトが安定的に操業・返済していけるよう、融資契約書には自己資本比率をはじめ様々な約束事が記載されています。事業会社と常日頃コミュニケーションを取りながらこれらの指標を確認し、問題が発生した際にはレンダーとしての立場を維持しつつ事業会社と折衝しました。
これらの既往案件には、既に発電所の建設工事が完了し、運転開始しているケースも多くあります。その地域に住む人々のもとにリアルタイムで電気を届けている事業を支援するJBICの仕事に、非常にやりがいを感じることができました。
私は入行2年目で同部の第2ユニットに異動し、新規案件を担当するようになりました。現ユニットの主な業務は、中東や欧州などにおけるIPPプロジェクト※1へのプロジェクトファイナンス(以下、PF)※2。再生可能エネルギーの発電事業の知見を日本企業が獲得できる上に、現地国が目標として掲げる温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロにも寄与する、非常に意義ある案件に携わることができています。
私はこうした新規案件への金融支援を実現させるべく、融資契約の交渉などを行っています。契約書のドラフトを読み、JBICとして譲れない条件など修正すべき点を挙げ、上司に相談しながら顧客との議論を重ねていきます。まだまだ知識が乏しいため上司や先輩方のフォローは欠かせませんが、若手であっても担当者として主体的に動くことが大切です。上司からの指示をただ待っているのではなく、自ら積極的に顧客とコミュニケーションを取って情報を収集し、ユニット内に還元することを心掛けています。
新規案件を担当している今、第4ユニット時代に既往案件を通して培ったスキルが非常に役立っています。それは、融資契約書の読み方です。案件管理業務において、契約書はまさに取扱説明書のようなもの。初めは英文でまとめられた300ページにも及ぶ契約書に戸惑いましたが、先輩方にもサポートしていただきながら日々の業務でたくさん読むうちに、見るべきポイントが分かるようになってきました。融資実行後に問題が起きないようにするためには、契約書にどのような内容が必要か。これから新規案件の契約交渉を行っていく上で大切な視点を獲得することができました。
一方、大規模なPFのストラクチャーについてはまだまだ勉強が必要だと感じています。PFの契約書は案件ごとにテーラーメイドであり、技術面から財務面、法務面まで豊富な知識が求められます。関連書籍を読んで一般的な知識を身につけながら、実際の案件を通して個別のイシューへの対応方針を上司とともに検討していくことで、少しずつ理解を広げてきています。JBICでは、ロンドンで開催される弁護士事務所主催のPF研修を受講することもできるので、機会を見つけてぜひ行ってみたいと思っています。
※1 IPPプロジェクト:独立系発電事業者(Independent Power Producer)が発電所を建設・運営し、現地国の電力公社などに売電するプロジェクトのこと。
※2 プロジェクトファイナンス(PF):プロジェクトに対する融資の返済原資をそのプロジェクトが生み出すキャッシュフローに限定する融資スキームのこと。
※3 デューディリジェンス(DD):ビジネスモデルや財務状況、法務リスクなどの調査。