米国、カナダ、ベネズエラ・ボリバル共和国、コロンビア共和国、ペルー共和国、ボリビア共和国、エクアドル共和国を管轄するニューヨーク駐在員事務所に、入行3年目で配属された澤田英里香。様々な最先端分野に取り組む日本企業から初期的な案件相談をいただく中で、幅広い地域・セクターの政治経済・ビジネス動向を追っています。海外駐在に至った経緯や、主体的にネットワーク構築を図る日々、充実した海外生活について聞きました。
私は小学校高学年の3年間をニューヨークで過ごしました。今思えば、多様なバックグラウンドを持つ同級生と関係性を構築し、学校で米州の歴史を習った幼少期の生活が、国際関係や海外ビジネスに関心を持つようになった原点です。その後、大学で国内外の社会問題について学んだ私は、金融、特に公的な機関であればインパクトのある形で社会問題の解決に貢献できるのではないかと思い、JBICに入行しました。
入行当初から「国際ビジネスの最前線に立って案件や顧客と接することができる、海外駐在員事務所で働きたい」と考えていましたが、その思いが強まったのは、石油・天然ガス部(現 エネルギー・ソリューション部)時代にお世話になった先輩駐在員の方々の影響です。例えば、トリニダード・トバゴ共和国への出張時、同行してくださったワシントン駐在員事務所の先輩の話の引き出しが多いことに尊敬の念を抱き、海外駐在への興味がさらに膨らみました。
入行3年目で配属されたニューヨーク駐在員事務所では、米国、カナダ、アンデス諸国等の管轄国の政治経済・ビジネス動向について、ESG※1やサプライチェーンなどテーマ横断的に調査を行っています。米州の最先端分野やスタートアップ、新エネルギー、バッテリー・サプライチェーンなどに関わる日本企業から初期的な案件相談をいただいており、こうした広範囲な地域・セクターの動向を追う必要があります。日々勉強を積み重ねなければならず、チャレンジングな業務ですが、多様な業界の案件に携われる貴重な経験を非常に有り難く思っています。
赴任してから数か月後、私は「カナダ水素コンベンション」という水素経済の発展に向けた同国最大級のカンファレンスに参加しました。会場では、米国を意識した政策や産業への支援が連邦・州・市の制度や機関にまたがりマルチレイヤーになっていることや、先住民への配慮など、カナダの特色を肌で感じ取ることができました。ニューヨーク駐在員事務所からの参加者は私一人。同じテーブルに座っている各国の参加者にJBICの役割や直近の取組みを発信するなど主体的にネットワーキングを図り、最終日には現地機関の方と一緒に食事に行く機会も得ました。駐在員としてRM※2の基本動作を初めて実践できた出張だったと思います。その後もカナダ出張や同国に関するセミナーへの参加を重ねることで、担当国であるカナダのへの理解がさらに深まりました。
構成人数が限られ、セクター別で担当が分かれていない海外駐在員事務所では、私のように経験が浅い職員であっても行外からはJBICの代表として見られます。日々収集している情報を頭の中でフル回転させながら、各分野のプロフェッショナルである顧客と協議する必要があります。その場ではすぐに対応できないご質問などもありますが、そうしたときには、本店の営業ユニットをはじめ各セクターの知見が豊富な先輩方が、メニューや取り上げのポイントなどを丁寧に教えてくださいます。米州の政治経済動向を幅広くカバーされている事務所のリサーチャーや現地の事情に精通している秘書、また事務所運営に詳しい本店のバック部門の先輩方など、各分野のプロフェッショナルと連携しながら、米州地域統括事務所としてRM・案件組成、情報配信、出張、事務所運営などの広範囲な業務を遂行しています。
海外駐在を経て身についてきたのは、「未知の分野であっても自らハードルを上げすぎず、とりあえずやってみよう!」という精神。何にしても場数を踏むことでコンフォートゾーンを抜け出したいと考えています。目の前の顧客に真摯に向き合い、付加価値を提供できるようになることで、現地の一次窓口として信頼してもらえるようになることが目下の目標ですが、ニューヨークで構築したネットワークや養われた情報収集・発信力を、今後の業務にも活かしていきたいと思っています。
米国は近年、「人種のるつぼ(メルティングポット)」ではなく「人種のサラダボウル」と比喩されるようになりました。まさにサラダボウルのように一つの都市の中で多種多様な文化が楽しめるのは、ニューヨークならではの魅力だと思います。そんなニューヨークの街を散策し、多国籍なレストランやカフェを開拓したり、コメディクラブや美術館を巡ったりするのがお気に入りの休日の過ごし方です。現地で知り合った友人や他社の駐在員と一緒に、公園に設置されているコートでバスケットボールを楽しむこともあります。
また、連休を活用して他州に足を延ばすのも、私のリフレッシュ方法の一つです。最近ではサンクスギビングデーを絡めて連休を取り、アリゾナ州のセドナを旅行して大自然に癒やされました。
※1 ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉。
※2 RM:ビジネスパートナー間に良好で長期的な関係を構築するためのビジネス戦略手法。