日本の技術や知見を結びつけ世界の様々な課題を解決へと導くプラットフォーマーに 代表取締役総裁 林 信光 Hayashi Nobumitsu日本の技術や知見を結びつけ世界の様々な課題を解決へと導くプラットフォーマーに 代表取締役総裁 林 信光 Hayashi Nobumitsu

MESSAGE

ウクライナ復興支援において
国際的な枠組み構築を主導

3年超に及んだコロナ禍の混迷を経て国際経済社会は今、各地で止まない戦火やそれに伴うエネルギー・食糧価格の高騰などを背景に、不確実性をますます高めています。私たちが慣れ親しんできた民主主義や市場経済に基づくグローバリゼーションなどの価値観は、危機的な状況にあります。

こうした世界情勢の中、2023年5月に広島で開催された主要7か国首脳会議(G7サミット)では、電撃来日したウクライナのゼレンスキー大統領が協議に加わり、各国によるウクライナ支援への強い結束が表明されました。また、日ウクライナ首脳会談の席では、ポーランド政府を通じたJBICのウクライナ支援の取組みについて言及があり、ゼレンスキー大統領から感謝の言葉を頂きました。これは、ウクライナからの避難民を多数受け入れているポーランドを日本政府として支援するために、ポーランド開発銀行がウクライナ支援基金に充てる目的で発行するサムライ債※に、JBICが保証を供与したものです。さらに、ウクライナ復興に向けた民間企業の投資を後押しするために、G7各国の開発金融機関及び欧州復興開発銀行と協働する国際的な枠組み「ウクライナ投資プラットフォーム」をJBICが主導する形で新設。今後は国際協調の下、ウクライナ及び周辺国での日本企業の活動の支援等にも注力する方針です。

ウクライナ及び周辺国の支援は、国際社会の喫緊の課題です。多国間連携で進められる支援において、日本の政策金融機関であるJBICはこのように重要な役割を果たしています。この責務を追求することは、国際的な場での日本の存在感を高めることにもつながります。

地球規模の課題の解決に資する
ファイナンスを積極的に推進

不確実性が高まる状況において、日本経済が持続的に成長していくためには、人口減少・少子高齢化への対処とともに、経済安全保障の確保、サプライチェーンの強靱化、デジタル変革への挑戦、気候変動問題などの地球規模の課題への貢献といったグローバルな視野を持った取組みが不可欠です。JBICは第4期中期経営計画(2021~2023年度)において、「国際経済社会の持続可能な発展に向けた地球規模の課題への対処」を重点取組課題の一番目の柱に設定。持続可能な発展に向けたファイナンス支援として、温室効果ガス削減やグリーンイノベーションの普及を支援する「グリーンファイナンス」、世界のエネルギー移行に向けた取組みを支援する「トランジションファイナンス」、そして社会的な課題の解決に資する事業に対する「ソーシャルインパクトファイナンス」を積極的に推進しています。

ソーシャルインパクトファイナンスの一事例として、今後の経済成長が期待されるアフリカでの取組みを紹介します。JBICはアフリカ西部のベナン共和国において、未電化地域の小学校の屋根にソーラーパネルを設置する発電事業を支援しました。昼間、授業中に太陽光発電でランタンを充電し、それを児童が家に持ち帰ることで、自宅でもランタンの明かりで勉強ができます。学校に来ないと充電ができないため児童が毎日登校することにつながり、通学習慣の定着や児童労働の抑止にも貢献する、社会的な意義の高い事業です。

この事例が示すように世界には、貧困や飢餓の解消、不平等や格差の是正、脱炭素社会の実現といった数多くの課題があり、また一方では、それらを解決し得る優れた技術や専門的な知見を持った日本企業が、業種や規模を問わず多く存在します。JBICは、この両者をつなぐグローバル・フィナンシャル・プラットフォーマーでありたいと考えています。その役割は、政策金融機関として多様な金融スキームを通じて支援を行うだけに留まりません。世界の様々な解決されるべき課題に対し、ソリューションを持つ日本企業との間を取り持ち、さらに、各国政府や機関との長年のパートナーシップを活かして多くの関係者との交渉・調整をリードし、課題を解決へと導いていく。これは極めてチャレンジングであると同時に、JBICにしかできない役割です。日本が持続的に経済成長し、かつ世界の中で存在感を発揮していくために、JBICが果たすべき役割は一層重要になっています。

チームや関係者の力を融合し
成果を最大化できるリーダーに

JBICがグローバル・フィナンシャル・プラットフォーマーの役割を果たす上では、職員一人ひとりに、金融に関する高度な専門性に加え、国際関係の中で日本と国際経済社会の発展を見据える公共性、国際性が求められます。職員の総数が約700名と、決して大きな組織ではないJBICでは、各職員は若手のうちから裁量と責任を持った仕事を担い、実務や各種の研修を通じてこれらのスキルを磨いていくことができます。

加えて、これからJBICに入る方々に私が強く望むのは、能動的にリーダーシップを発揮することです。リーダーシップについて考えるとき、私の脳裏には2023年のワールド・ベースボール・クラシックでMVPを獲得した大谷翔平選手の姿が浮かびます。彼自身が投打に大活躍すると同時に、チームメートを鼓舞して能力を引き出すリーダーとしても力を発揮し、優勝に大きく貢献した姿は皆さんの記憶にも刻まれていることでしょう。JBICの仕事も同様にチームで進めます。また、国内外の様々な関係者との協働も極めて重要です。自らがベストを尽くすとともに、チームのメンバーや多くの関係者の力を融合して成果を最大化していくことが、JBIC職員には求められます。若い年次から責任ある業務を幅広く経験する中で、仕事に欠かせないリーダーシップをいち早く身につけてほしいと期待しています。

JBICでは働きやすい環境づくりにも注力し、職員がそれぞれの価値観や事情に応じた働き方で、能力を最大限に発揮できるようにするための制度や環境の整備を進めています。また、年齢や役職にかかわらずすべての役職員が対等な立場でアイデアを出し合いチャレンジできる組織を目指し、組織風土の変革にも取り組んでいます。私自身も取組みを率先する立場として、若手職員も含め誰に対してもフラットに接し、すべての役職員が自分の意見や考えをより活発に安心して言い合える関係性の構築に努めています。これには、私がオフの時間に体力づくりで続けているキックボクシングのジム通いが役立っています。親子以上に年齢の離れた若いインストラクターから指導を受け、無心に汗を流す時間は、年齢や立場を超えて相手から謙虚に学ぶ大切さを思い起こさせてくれます。

職員一人ひとりの前例にとらわれない新しいアイデアやチャレンジが、日本企業の海外展開のさらなる後押しとなり、ひいては世界の様々な課題の解決にもつながります。プロジェクトが実施される国や地域の人々にとって、世界が変わるほどに大きな意義を持つ取組みをJBICは支えています。「日本の力を、世界のために。」というJBICが掲げるスローガンのとおり、世界をより良く変えるために日本ができることはたくさんあるのだと気付くでしょう。探究心を発揮して問題解決への道を探り、果敢に挑む気概を持った皆さんと仕事ができることを楽しみにしています。

※サムライ債:外国の国や企業といった外国の発行体が日本国内市場で発行する円建て債券のこと。

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