company メッセージ

グローバルな視座で
企業や人同士をつなぐ
JBICだから担える
先導と共創の役割がある

代表取締役総裁 林 信光 HAYASHI Nobumitsu

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分断と不確実性が強まる中で
地球規模の課題に向き合う

国際社会は「分断の時代」にあります。そしてその「分断」は、この一年でさらに複雑に、さらに深くなったと感じています。米国トランプ政権の政策変更、米中対立の先鋭化、長期化するロシアによるウクライナ侵攻。こういった状況を背景に、地政学的リスクが高まり不確実性が増大しています。見通し難い国際情勢の下、経済安全保障が脅かされるばかりでなく、法の支配やリベラルデモクラシー、マルチラテラリズム(多国間主義)といった、私たちが依拠してきた価値観そのものが挑戦を受けています。

グローバリゼーションを追い風に発展してきた日本経済も激しい環境変化にさらされています。エネルギーや資源、あるいは市場の確保が、今後は一層困難になることが懸念されます。こうした状況の中で、日本経済が持続的に成長し、また、日本企業が世界でプレゼンスを発揮するためには、リスクや不確実性に対応したサプライチェーンの再構築が欠かせません。他方で、気候変動や生物多様性といった地球規模課題への対処は待ったなしであり、日本の産業界にとっても克服すべき課題であると同時に、新たなビジネスチャンスでもあります。異常気象を含む環境変化に強靭に対応しつつ、安定的な経済成長を実現するためにも、AIをはじめとする革新的な技術によるブレークスルーが必要です。

不確実性が高まる世界で、各国が抱える社会課題や地球規模の課題をどのように解決へと導き、持続可能な未来を実現していけるか。日本の政策金融機関として、グローバルな舞台で人と人、企業と企業を結び付ける立ち位置にあるJBICだからこそ、果たせる役割は大きいと確信しています。

持続可能な未来の実現へ
JBICは先導役として貢献する

「日本の力を、世界のために。」をコーポレートスローガンに掲げるJBICは、多様な金融ツールを駆使して日本企業の海外展開をサポートするとともに、ホスト国や世界全体の様々な課題を解決していくことを目的とする機関です。公的な立場から各国政府や関係機関と築きあげた信頼関係や、長年にわたり培ってきた経験や知識を活かし、グローバルにステークホルダーを糾合して、現場でプロジェクトを実現するために力を発揮します。そして、時代の変化に呼応しJBICの役割や機能を絶えずアップデートしてきました。

JBICは第5期中期経営計画(2024~2026年度)で、“Navigate toward and Co-create a Valuable Future”をテーマとし、JBICが先頭に立って道を示し、様々なステークホルダーと共創し、新たな価値を創出することを目指しています。三か年で優先的に実現したい重点取組課題として「持続可能な未来の実現」、「我が国産業の強靱化と創造的変革の支援」、「戦略的な国際金融機能の発揮による独自のソリューションの提供」、「価値創造に向けた組織基盤の強化・改革」の四つを掲げ、それぞれの課題の達成に向けた取組みを着実に推進しています。

重点取組課題の一つ「持続可能な未来の実現」に沿った最近の取組み事例に、インド・アッサム州でのバイオ燃料事業への融資案件があります。現地の特産品である竹を原料にバイオエタノールを製造し販売する事業です。環境への負荷がより小さく、化石燃料に代わるクリーンなエネルギーとして期待されています。この事業は同時に、竹を生産する農家の収入増加にもつながります。win-winどころかwin-win-winのプロジェクトです。

また、アラブ首長国連邦やインドでは、日本の優れた技術を活かした廃棄物処理・発電のプロジェクトが複数展開されています。生活ごみを回収し、焼却過程で出る熱エネルギーを利用して発電を行うもので、非化石燃料による発電容量を増強することができます。加えて、都市廃棄物の埋め立て用地不足や、それによる衛生の悪化といった問題の改善にもつながります。

これらのプロジェクトに通じるのは、ホスト国が抱える地球環境問題も含めた複数の社会課題に同時に対処し、解決に貢献するという点です。脱炭素化に向けた取組みは世界共通でも、国や地域の事情によって、それをどのように実現していくかの道筋は様々です。JBICは、相手国により異なる期待やニーズを踏まえながら、こうした社会的意義の高い案件を様々なステークホルダーとともに実現していくことで、課題解決を「先導」し、未来を「共に創る」役割を追求しています。

挑戦を続けるJBICの一人として
知的な体力と柔らかい頭を鍛える

JBICがこの役割を果たしていく上では、職員一人ひとりにも「先導」と「共創」の実践が求められます。その前提として、「公共性」と「国際性」、そして金融に関する「専門性」を高い水準で備えることも必要です。JBICでは、これらの力を着実に身につけていける独自の研修体系「JBIC Academia」を設け、ファイナンスや言語などの知見、ビジネス・マネジメントスキルなどを幅広く習得できる多様な研修を設定し、毎年拡充しています。若いときから海外職務の経験も得られます。オフィスワークとテレワークを組み合わせて、職員がそれぞれの価値観に応じた働き方で能力を最大限に発揮できるよう、制度や環境を整えています。

JBICは人数の限られた組織だからこそ、各職員が若い年次から裁量と責任を持った仕事を担い、先輩や上司のサポートを受けながら、実践を通して知識やスキルを高めることができます。若手職員には、現場での様々な体験を、視野を広げる絶好の機会と捉え、自ら行動できる人に育ってもらいたいと思います。キャリア入行される方には、それぞれの分野で積み重ねてきた経験や専門性を大いに発揮し、これまでになかった視点からのアイデアや提案を積極的に出してもらいたいと期待します。それによってJBICもさらに発展できると考えています。

世界が変貌しJBICが携わる領域が拡大している今、新たな知識や情報を常に収集することが大切で、その分析はAI任せにせず自分で咀嚼し判断する必要があります。従来の価値観にとらわれず、新しいやり方に果敢に挑んでいく姿勢も欠かせません。困難な課題に向き合い、粘り強くやり遂げる力も求められます。これら全ての土台として、探究心を持って新しいことを学んでいく知的な体力と柔らかい頭をぜひ鍛えてほしいと思います。

私にとって、その研鑽に役立っているのが、10年以上前から趣味で続けるラテン語の勉強です。古典言語ですから、日常会話で役に立つわけではありません。しかし2000年前に記された書物を原語で読む醍醐味があります。一言一句辞書を引きながら『ガリア戦記』を読むと、ユリウス・カエサルがリーダーの振舞いや異文化との対峙をはじめ、多くのことを教えてくれます。中でも「人間は自分が望むように物事を見る」という意味の一文が心に刻まれています。不確実な時代にあって人はつい、自分が見たいと思う現実だけを見て、不都合なことから目を背けがちです。それでは状況は変わりません。物事をあるがままにしっかりと認識し、現実にどのような課題やリスクが存在するのかを正しく把握してこそ、適切に対応することができるのです。

世界には解決すべき課題が山積しています。それらに正面から向き合い、一つでも多くの課題の解決に日本企業とともに貢献することが我々の仕事です。世界のために役に立ちたい、課題解決に力を尽くしたいという意欲を持った皆さんと、同じJBICの一員として挑戦を重ねていけることを楽しみにしています。